こども性暴力防止法(日本版DBS)上の義務研修について(2)

前回の記事では、あまり広く認知されていないものの、学校は対象者に対して、こども性暴力防止法上の義務研修を今年(令和8年)の12月25日までに実施し、報告できるように準備しておく必要があることについてお話ししました。

それでは、「こども性暴力防止法」の義務研修を、学校は『誰』に受講させなければならないのでしょうか。

現行(令和8年9月)版の「こども性暴力防止法ガイドライン」では、「対象業務従事者」に対する研修が必要であると書かれています(ガイドライン121頁以下)。

しかし、不思議なことに、いくらガイドラインを隅から隅まで読み込んでも、この「対象業務従事者」という言葉の明確な定義はどこにも書かれていません。

おいおい…と、言いたくなるところですが、この義務研修、都道府県の私学課が公開しているページからも学校が準備しなければならない事項から抜け落ちている例が見られるくらいなので、おそらくこども家庭庁の担当部局も含めて精査する余裕がないくらい現場はバタバタな状況なのでしょう。

愚痴を言っても仕方がないので、研修を義務付けているこども性暴力防止法8条に戻ると、「学校設置者等は、児童対象性暴力等の防止に対する関心を高めるとともに、そのために取り組むべき事項に関する理解を深めるための研修を教員等に受講させなければならない。」とされています。

そして、「教員等」の定義については、こども性暴力防止法2条4項以下に置かれており、ガイドライン39頁以下で解説されています。

しかし、ガイドラインを読み込むとこの「教員等」の定義、一般に想像する範囲よりもものすごく広いものとなっています。

と、いうのも、こども性暴力防止法2条4項1号ハの「内閣府令で定める職員」について定めている、こども性暴力防止法施行規則1条7号が示している、教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(通称「児童生徒性暴力防止法」)21条に規定する者とは、「教育職員等以外の学校において児童生徒等と接する業務(当該学校の管理下におけるものに限る。)に従事する者」を指しています。

そうすると、(複数の法令をたらい回しにされる形で非常にわかりにくいのですが…)最終的に「教員等」の中に含まれるのは、校長、園長、副校長、副園長、教頭、主幹教諭、指導教諭、主務教諭、教諭、助教諭、養護教諭、養護助教諭、栄養教諭、講師、実習助手、寄宿舎指導員、教授、准教授、助教、助手、(高専の)技術職員、スクールカウンセラー、特別支援教育支援員、部活動指導員、学校司書、(高専の)指導補助者及び、学校の管理下で児童生徒等と接する業務に従事する者のうち支配性、継続性及び閉鎖性のある環境の下で児童等に接する者…ということになります。

ガイドラインを基に、中学校・高等学校向けに少し整理すると、

  • 必ず研修を受けさせなければならない職種

校長、教頭、教諭、養護教諭、副校長、主幹教諭、指導教諭、主務教諭、栄養教諭、助教諭、講師、養護助教諭、実習助手、船舶職員(実習船)※専門高校

スクールカウンセラー、部活動指導員、学校司書、学習指導員、外国語指導助手(ALT)、日本語指導補助者、母語支援員、部活動外部指導者、校内教育支援センター支援員、特別支援教育支援員

  • 支配性・継続性・閉鎖性のある環境での児童・生徒対応にあたる可能性がある者に研修を受けさせなければならない職種

事務職員、スクールバス運転手、学校医、学校歯科医、学校薬剤師、学校用務員、医療的ケア看護職員、スクールソーシャルワーカー、情報通信技術支援員、教員業務支援員、副校長・教頭マネジメント支援員、観察実験アシスタント、スポーツ推進委員、管理指導員、スポーツ国際交流員(SEA)、外部専門家、医療的ケア指導医、スクールガード、スクールガードリーダー、学校給食栄養管理者(学校栄養職員)、技術職員、通信教育連携協力施設の職員、その他職員

となります。

ざっくりと、管理職を含む教員や、児童・生徒への指導を行う職種については無条件で研修を受けさせなければならず、その他の事務職員を含む学校の業務を行う者については支配性・継続性・閉鎖性のある環境での児童・生徒対応にあたる可能性があれば研修を受けさせなければならないといった整理になります。

なお、「支配性・継続性・閉鎖性」の判断のうち、「支配性」については、「業務の中で児童等と接する機会が継続的にある場合には、原則として、支配性があるものとして判断すること」(ガイドライン41頁)とされているため、事実上「継続性」が認められれば自動的に満たされる状態です。(これは要件と言えるのでしょうか…という疑問はありますが。)

「継続性」については、「日常的、定期的、その他継続性をもって(不定期であっても反復継続が見込まれる場合など)児童等と接する機会が想定される業務」に従事させる場合には、「(短期・長期の従事であるか否かにかかわらず、)継続性があるものとして判断すること」とされている一方、「年に1回のイベント講師や、緊急時に突発的に接する場合など、児童等との接触が一時的であるものは、継続性がないと判断し得る」とされている(ガイドライン41・42頁)ことから、単発(1回だけ)の場合を除いて全て認められるように思われます。

そして、「閉鎖性」についても、「他の職員や保護者等が同席しないなど、(オンラインを含め)第三者の目に触れない状況で児童等と接する機会が生じ得る場合(従事者一人に対して児童等が複数の場合を含む。)には、閉鎖性があるものとして判断すること」(ガイドライン42頁)とされています。

要するに、学校の業務を行う者のうち、1人で児童・生徒対応をする可能性がある者は全て研修を受けさせる必要がある、ということになりますね。

常時ほかの教職員がいる環境を確保するのは現実的ではない学校も多いでしょうし、事実上全ての事務職員が研修対象になる学校が多いのではないでしょうか。

用務員や警備員といった学校の中で業務に従事する者や、外部専門家も含まれる点、そして、校長・教頭といった管理職も対象に含まれる点など、対策をしていても見落としが非常に多く発生しそうです。思い切って学校内で働いている者全員に受講させてしまった方が判断を間違えないのではないか?とまで思ってしまう内容ですね。


当事務所では、私立学校での校内研修実績が豊富な一般社団法人 私学労務研究会様と共同で、こども性暴力防止法の義務研修に完全対応した「私立中高のこども性暴力防止研修」を開発いたしました。(原則は中学校・高等学校を想定しておりますが、小学校その他の各種学校等についてもご相談可能です。)

「座学」・「演習」の必須項目を2時間で網羅したほか、それぞれ記名式の「小テスト」・「アンケート」を実施することでどの教職員がいつ受講を完了し、どの程度理解しているのかを示す資料もその場で出来上がるので所轄庁に示しやすい形になっております。

勿論、実際の研修前には事前の打合せを通して各校のルールを踏まえた形にカスタマイズが可能。

当日欠席者対策として、視聴期限付きオンデマンドにも対応しております。

お申し込み・ご相談は、私学労務研究会様まで。