こども性暴力防止法(日本版DBS)上の義務研修について(1)

昨今、こども性暴力防止法(日本版DBS)対応のために学校現場は慌てて準備をしているとよく耳にします。
(当職の現在の勤務校でも、適切な対応のための準備を進めているとの話が漏れ伝わってきています。)

しかしながら、「令和8年12月25日までに全ての教員に対して、研修を受講させる義務がある」ことについてはあまり周知されていないようです。

こども性暴力防止法8条では、「学校設置者等」は、「児童対象性暴力等の防止に対する関心を高めるとともに、そのために取り組むべき事項に関する理解を深めるための研修を教員等に受講させなければならない。」と定めています。

「犯罪事実確認義務等」(こども性暴力防止法4条)については、施行時(令和8年12月25日)に現職の者については3年以内に実施すればいい(施行令4条)という経過措置があるのに対して、この研修義務については、経過措置は置かれていません。

そこで、「こども性暴力防止法施行ガイドライン」を確認すると、「学校設置者等については、法の施行の際現に児童等に接する業務に従事させている者には、原則として、施行前に研修を受講させる必要がある」(令和8年9月改訂版・124頁)と記されています。

すなわち、学校は、令和8年12月25日までに全ての「対象業務従事者」に対して、こども性暴力防止法の義務研修を受講させなければなりません。

(余談ですが、「対象業務従事者」という単語がこども性暴力防止法施行ガイドラインに何度も出てくるのですが、現行版のガイドラインを見る限り定義が見当たらないんですよね…。そんな「対象業務従事者」については次の記事で深堀りします。)

しかも、「こども性暴力防止法施行ガイドライン」によると、こども性暴力防止法上の義務研修は、「座学」及び「演習」の両方を実施しなければならないとされています。

法律上は「座学」及び「演習」の両方を実施しなければならないことまでは明記されていないのですが…。

所轄庁による監査等の際には、「こども性暴力防止法施行ガイドライン」に基づいてチェックがされることが予想されるので、事実上、義務になっている状態ですね。

なお、こども性暴力防止法上の義務研修は、法律上は実施記録の保管や所轄庁への報告についてまでは義務化されていないようにも読めるのですが…。

「各業法に基づく監督等であることから、実際に定期報告を得る情報の内容や具体的な監督等の方法は、こども家庭庁への定期報告事項の表も参考に、各所轄庁において判断することとなる」(こども性暴力防止法施行ガイドライン324頁)と記されていることから、実務的には、所轄庁(都道府県の私学課等)が監査等の際に実施記録の提出を求める運用をとる可能性がありそうです。

そうすると、事実上、全ての学校で、令和8年12月25日までに「いかなる研修を実施し、どの教職員が、いつ受講したか」を所轄庁に報告できる状態にしておくことが必要になってきます。

また、研修が法律上の義務である以上、万一不測の事態が生じた際に、学校側が適切に研修を実施していなかったとなれば責任を追及されることは免れないでしょうし、世間の関心の高さを踏まえると、実施漏れが発覚した際に学校側に生じるレピュテーションリスクも相当大きなものになることが予想されます。

こども家庭庁では、「標準研修」として所定の研修動画を教職員に視聴させ、途中で都度動画を止めて各自でワークシートを済ませれば「座学」・「演習」の双方を受講したものと認める方針のようですが…(ガイドライン125頁)。

学校側がYoutubeにアップロードされている動画を教職員が実際に視聴したかを確認することは難しく、自己申告になることが予想されます。逆に、学校側で個別に「標準研修」を履修しているかをきちんと確認しようとすると、研修動画をオンデマンド化するほかなく、一定規模以上の法人を除くと現実的ではないように思われます。

また、履修の有無を管理する負担や、未履修の教職員に督促する負担等を考えると、ただでさえこども性暴力防止法対応でリソースを割かれている事務方に研修まで計画を策定・実施する余力が残るのかは疑問です。

他方で、非常勤講師や外部の部活動指導員も含めたすべての対象者に対し、講堂等で一斉に研修を受講させるという形も、現実にはなかなか難しいのではないかと思われます。

(ガイドラインには、研修時間は労働時間に参入する旨をわざわざ明記されていますが…非常勤講師等の場合そもそも物理的に時間を確保できるかの問題もあることは想定されているのでしょうか…?)

そうすると、教諭や常勤講師などの大多数の教職員に対して一斉に研修を実施して記録を作成し、当日欠席者には後日、令和8年12月25日までに一斉研修の動画等を視聴させたうえで演習教材に取り組ませる形で個別に補足していく形が「いかなる研修を実施し、どの教職員が、いつ受講したか」を所轄庁に報告できる状態にするための現実的な方法になってくるものと思われます。


当事務所では、私立学校での校内研修実績が豊富な一般社団法人 私学労務研究会様と共同で、こども性暴力防止法の義務研修に完全対応した「私立中高のこども性暴力防止研修」を開発いたしました。(原則は中学校・高等学校を想定しておりますが、小学校その他の各種学校等についてもご相談可能です。)

「座学」・「演習」の必須項目を2時間で網羅したほか、それぞれ記名式の「小テスト」・「アンケート」を実施することでどの教職員がいつ受講を完了し、どの程度理解しているのかを示す資料もその場で出来上がるので所轄庁に示しやすい形になっております。

勿論、実際の研修前には事前の打合せを通して各校のルールを踏まえた形にカスタマイズが可能。

当日欠席者対策として、視聴期限付きオンデマンドにも対応しております。

お申し込み・ご相談は、私学労務研究会様まで。